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ドクターインタビュー

ドクターインタビュー

「放っておくと脳梗塞!?」
頚動脈狭窄症とは?

脳神経外科 部長芝 真人

まず、“頚動脈”とはなんですか?

頚動脈は心臓から出ている大動脈から分かれて首(頚)に向かう血管です。この血管は脳に血液を供給する重要なもので、首のあたりを触るとドクドクと拍動を感じることができます。この脳に向かう血管が細くなると「頚動脈狭窄症」と呼ばれ、脳梗塞の原因になります。

頚動脈狭窄症があるとどうして脳梗塞が起こるのでしょうか?

脳梗塞を引き起こす原因としてプラーク(動脈の内側にできる悪玉コレステロールや脂質の塊)があります。プラークが大きくなって血管を詰まらせる場合と、破片が血流に乗って脳の血管を詰まらせる場合があります。  

頚動脈狭窄症に特有の症状はありますか?

症状のないことが多いですが、体の片側、右か左の手足が動かしにくくなったり、喋りにくくなったり、片目が見えなくなったりすることがあります。こういった症状が一時的に起こり脳梗塞の前兆として現れることがあります。 これを一過性脳虚血発作(TIA)と言います。 

しかし本格的に脳梗塞を起こすまでは症状がないことが多いです。例えば、動脈硬化の危険因子とされる糖尿病や高血圧を持っている方が、病院を受診せず、ある日突然手足が動かなくなって脳梗塞で運ばれてきて、入院後、原因を調べると頚動脈狭窄症が見つかるケースが一定数あります。こういった例では動脈硬化の危険因子を早期に治療していれば、脳梗塞になる前に対処できたかもしれません。  

症状がなくても、検査したほうがよいということですか?特に検査したほうがいい人はいますか?

生活習慣病と関係が深い病気です。喫煙習慣、過度の飲酒、血圧が高い、コレステロールが高い、糖尿病といったリスクがある人は症状がなくても脳ドックを受けてみてもいいかもしれません。複数のリスクを併せ持っている人は特に狭窄症になりやすく、注意が必要です。また、家族に脳や心臓の血管病を患った人がいる場合や、一時的に手足が動かしにくくなったり、目が見にくくなったりした経験がある方は必ず調べた方がいいです。  

どんな検査がありますか?

最も簡単な検査はエコー検査です。皮膚の上から超音波を当てて血管の状態を確認でき、まったく痛くありません。さらに詳しく調べるとなった場合、当院ではMRIや造影剤を使ったCT、カテーテルによる脳血管造影といった検査を行っています。  

最近ではかかりつけ医の先生に生活習慣病を診てもらっている患者さんがエコー検査を受け、頚動脈狭窄症を指摘されて当院に紹介してもらうことも増えています。 

治療が必要な頚動脈狭窄症と診断を受けた場合、どんな治療がありますか?

治療法は3つの柱に分かれます。まず薬物治療です。禁煙指導や飲酒の制限の他、血圧や脂質の異常、糖尿病に対する治療を行います。狭窄の程度によっては血液をサラサラにする抗血小板薬の投与も行います。次に、狭窄の度合いが強い場合やすでに頚動脈狭窄症が原因で脳梗塞を起こしている場合には、入院して「頚動脈内膜剥離術(CEA頚動脈ステント留置術(CASといった血行再建術を行います。 

手術治療の向き不向きはありますか?

そうですね。頚動脈内膜剥離術は全身麻酔が必要ですので心臓や肺など体の状態が悪い患者さんには行えないこともあります。一方、ステント治療は局所麻酔で行えるため、全身麻酔が難しい患者さんにも行うことができます。プラークの性質や患者さんの病状に応じて適切な治療法を選ぶことが重要です。  

当院では、両方の治療法に対応できる資格を持っているため、どちらかに偏ることなく患者さんにとって最適な治療法を提示することができます。 

入院治療を行う場合、入院期間はどれくらいですか?

まずは2泊3日の検査入院を行い、どちらの治療法が適切かを判断します。その後、別の日に再入院していただき手術を行います。順調に進めば頚動脈内膜剥離術は術後1週間ほど、頚動脈ステント留置術は術後4日ほどで退院できることが多いです。  

予防としてできることはありますか?

生活習慣病に気を配ることが大切です。禁煙や飲酒の制限、定期的健康診断を受けて高血圧や脂質異常症、糖尿病を早期に治療することが予防につながります。高齢となってくるとリスクも増えてきて、ほとんどは軽度ですが頚動脈狭窄症を持っているが多なり全く正常という方はほとんどいません。予防し悪化させないことが重要です。  

最後に読者に向けて一言メッセージをお願いします。

治療・手術がうまくいったとき、それは決して私一人の力ではなく、信頼して治療・手術を任せてくださった患者さんやそのご家族、それぞれの仕事をしっかりこなしてくださった病院のスタッフ、皆様のおかげでうまくいったという「おかげさま」の心を忘れないようにしています。 

インタビュー医師紹介

2002年三重大学医学部を卒業。脳神経外科専門医、脳卒中の外科学会技術指導医、脳神経血管内治療専門医、脳卒中指導医、神経内視鏡技術認定医を取得しており、脳神経外科疾患全般に対して直達手術から低侵襲治療まで幅広く対応できるよう研鑽に努めています。患者さんやそのご家族には丁寧で分かりやすい病状・治療説明を行うことを、また治療においては手術だけでなく、術後も可能な限り自分自身できめ細かく対応して、退院までしっかり術後管理することを心がけています。

主な治療疾患

未破裂脳動脈瘤(開頭クリッピング術、コイル塞栓術)、頚動脈狭窄症(内膜剥離術、ステント留置術)、脳動脈閉塞症・狭窄症・もやもや病(頭蓋外・頭蓋内バイパス術)、くも膜下出血、脳内出血(頭蓋内血腫除去術、内視鏡下脳内血腫除去術)、急性期脳梗塞(経皮的脳血栓回収術)、脳腫瘍(頭蓋内腫瘍摘出術)、脊椎性脊髄疾患(固定術、除圧術)、正常圧水頭症(髄液シャント手術)、非交通性水頭症(内視鏡下第3脳室開窓術)など脳神経外科疾患全般

※文中に記載の組織名・所属・内容等は、2024年6月時点のものです。

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