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ドクターインタビュー

ドクターインタビュー

家でできる透析?全部おまかせの透析?
生活に合わせた透析の選択

腎臓内科 医長遠藤 真由美

「健康診断で腎臓に注意が必要」と指摘されました。どのような場合に腎臓内科の専門医に受診するべきなのでしょうか?


健康診断で指摘されて受診される人は、eGFR(推算糸球体濾過量)が60mL/min/1.73m2を下回った人が多いです。ただ、一度の健康診断の結果だけでは判断できないので、ある一定期間継続してeGFRの数値が下回っている人や、尿タンパクや尿潜血といった検尿で異常が出ている人なのかなども含めて判断しています。特に尿タンパクが出てきていると、慢性腎臓病(CKD)の可能性があり、病院でのくわしい検査が推奨されます。

「尿が泡立つ」と心配される人もいますが、尿が泡立つ原因はさまざまで、食事の影響を受けることもあります。正確な評価のためには尿検査を受けることをお勧めします。


                     日本腎臓学会より

どのような場合に透析が必要になるのでしょうか?

「腎臓が悪い」と診断されたら、すぐに透析が必要になるかというと、必ずしもそうではありません。透析の準備を始める目安としては、eGFRという数値を用います。私は腎臓の点数と患者さんに説明しているのですが、それが100点満点中10点未満になったら、透析について準備を始めましょうと言っています。ただし、数値だけで決めるわけではありません。薬をきちんと飲んでいるにも関わらず、むくみ(浮腫)や体の中のカリウムなどの電解質のコントロールができなくなったり、体液の酸・アルカリのバランスが調整できなくなったりすると透析を開始するタイミングになります。 いきなり透析が始まるということはありません。まずは、ほかの方法で病状をコントロールすることを考えます。

将来的に腎臓が悪化して透析が必要になるリスクが高いのはどのような人でしょうか?

持病がある方、特に高血圧、糖尿病、コレステロールが高いなどの素因がある人は、やはりリスクとしては高くなります。また、生活習慣病以外を由来とした腎臓病もあるので、家族歴も影響します。家族に尿検査で異常を指摘された人、腎臓が悪いと言われた人、透析をしている人などがいる場合は、リスクが高くなります。

次に、透析の種類について教えてください。

透析には血液透析と腹膜透析があります。

血液透析は簡単にいえば、病院に来ていただき、機械で血液をきれいにして体に戻す治療法です。病院で行うことが一般的で、週3回、1回に45時間程度かかります。

 


もう1つの腹膜透析は、基本的には自宅で行う透析です。腹膜というお腹にある膜が、老廃物やいらない水分を体外に出すという腎臓の代わりのような機能をしてくれます。この機能を利用して、お腹の中に液を溜めておき、また出すというサイクルを繰り返すことで、身体の中のバランスを保つという治療法です。この腹膜透析も2種類あるのですが、1つは夜間に機械で自動的に行う方法(APD)、もう1つは日中に手動で何回か交換する方法(CAPD)です。前者は準備と片付けにそれぞれ30分程度かかりますが、後は寝ている間に機械が自動的に透析を行なってくれます。後者も慣れてくれば1回の作業時間は30分程度です。

血液透析と腹膜透析それぞれのメリットとデメリットを教えてください。

血液透析を患者さんが敬遠される点としては、週3回の通院や針を刺す必要があることです。この地区でも課題になっていますが、特に高齢者の方の通院が負担になっているのではないかと思います。在宅血液透析というものもありますが、その場合、自分で針を刺す処置をしなければならないのでなかなか難しいと思います。
一方で、血液透析は医療者が針刺しから機械の準備まで全てやってくれるので、病院に行けば治療を受けられ、自分で透析の準備を行う必要がないという利点はあります。何か変化があっても医療者が速やかに対応することができます。

腹膜透析は家でできる治療なので、通院するのは月12回です。特に日中にお仕事などで忙しい方や、病院への頻回な通院が困難な方に向いています。また腹膜透析はお腹から出ているチューブを介して液の出し入れをするので、針を刺したりする必要がありません。
しかし、血液透析を行わず腹膜透析のみで生涯対応していくというのは少し難しいです。腹膜透析を行う場合はあくまで自分の腎臓の機能がある程度残っている必要があるからです。年齢とともに腎臓の機能が徐々に落ちてくると、腹膜透析だけでは十分な透析の効果を得られなくなるので、血液透析に変更する、あるいは血液透析を併用するということが必要になってきます。透析の効率という点では、血液透析の方がしっかり水を抜いたり、きれいにしたりできます。まず腹膜透析を始めて、それが限界になったときに、血液透析に移る、または血液透析を併用するという方も見えます。高齢の人であれば、血液透析は行わず、腹膜透析で対応できるところまでは治療するというような
選択をされる方もいます。



腎不全 治療選択とその実際より

当院ではそういう詳しい透析の話をするための外来を設けており、ライフスタイルに合わせた治療法を医師や看護師と相談することが可能です。

腎臓が悪くなったり透析を回避するためにできることはありますか?

まずは、腎臓が悪くなったというサインを早く見つけてもらうことですね。そのために健康診断やかかりつけ医で定期的な検査を受けましょう。これが重要です。腎臓の場合、自覚症状が出てからだと腎不全が進行している場合が多いです。そうなる前に健康診断でしっかり、サイン(eGFRや尿タンパクの数値の悪化)を早期発見してもらうことが大事です。あとはもちろん生活習慣です。一般的によくいわれるのは、適度な運動、塩分を控えた食事、禁煙、過度な飲酒を控えることです。

最後に読者に向けて一言メッセージをお願いします。

外来診察をしていると、「腎臓が悪い」=「透析」=「終わりだ」と考える方が少なからずいらっしゃいます。腎臓も他の臓器と同じで、きちんと対処すれば変わらず社会生活を営むことが期待できます。怖がらずに腎臓を守る手段を一緒に考えていきましょう。外来でお待ちしています。

インタビュー医師紹介

2011年3月三重大学医学部卒業後、済生会松阪総合病院で初期研修を受け、同院で後期研修の後、20154月から鈴鹿回生病院で勤務腎臓領域や透析を中心に診療を行っておりますが、一般内科の診療も担当しています透析に対する負のイメージを払拭しつつ、前向きに腎臓を守る治療を行って頂けるよう、日々診療に取り組んでいます。

専門医:総合内科専門医、透析専門医

主な治療疾患

・糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、
 ネフローゼ症候群、多発性嚢胞腎、
 膠原病関連腎疾患
・急性腎不全
・慢性腎不全

※文中に記載の組織名・所属・内容等は、2025年3月時点のものです。
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