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ドクターインタビュー

ドクターインタビュー

"循環器内科医に聞く!
狭心症・心筋梗塞の最新治療"

循環器内科 部長角田 健太郎

「狭心症」や「心筋梗塞」ってどんな病気ですか?

「狭心症」や「心筋梗塞」は虚血性心疾患のひとつであり、心臓の筋肉(心筋)に酸素を含んだ血液が十分に行き渡らず、胸部の痛みや息切れなどの症状が現れる病気です。動脈硬化により冠動脈が狭くなり、心筋に十分な血液が行き渡らなくなった状態を狭心症といいます。また、狭心症が進行し完全に詰まり心臓の筋肉にダメージが生じた状態を心筋梗塞といいます。

どんな患者さんに多い病気ですか?(疫学的な話・当院の近況)

一般的には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、家族歴がリスクとなります。最近の傾向としては、コントロールの悪い糖尿病の患者さんが増えています。また、若い人が増えてきている印象があり、特に40代、50代の肥満を伴った男性に多いですね。

80歳以上の高齢の方も多いです。近年「心不全パンデミック」といって高齢者の心不全患者さんが急増しているのが問題となっていますが、狭心症や心筋梗塞が原因の一つになっています。心臓に栄養を送る血管が3本あるうち、以前は悪い血管が12本程度だったのが、最近では3本の血管すべてが悪くなっている重症の方が増えています。

10年ほど前と異なり、若い人から高齢者まで、循環器内科専門医の治療が必要なケースが増えていますね。

どんな症状がありますか?

典型的な症状は、胸の真ん中が締め付けられるような痛みがあり、冷や汗が出ることもあります。他に、みぞおちが痛くなったり、左肩が痛くなったり、歯が痛くなる方もいます。肩の痛みで整形外科に行った後に循環器内科へ来られることも珍しくありません。

治療となった場合の流れを教えて下さい。

狭心症の場合は、まず外来で心臓CTを撮ったり、必要に応じて血管造影検査(アンギオグラフィー)を行って、どれくらい血管が狭くなっているかを見ます。

血管の状態に応じて、薬物療法をするか、風船で血管を膨らませる治療、つまりカテーテルを用いたステント治療(PCI) をするか、方針を決めます。細くなっている血管があって、カテーテル治療を行うとなった場合は入院して手術することになります。このとき、手術部位に石灰化病変(血管が硬く狭くなっているところ)があった場合には、ロータブレーターやショックウェーブといった機器を使っていくことになります。(後述)

狭心症の入院期間はカテーテル検査の場合は2泊3日、カテーテル治療の場合は3泊4日で重症度が高くても基本的には変わりません。入院中に冠動脈疾患再発予防目的でできるだけ栄養指導を受けていただきます。カテーテル治療は決定的な治療ですが、治療が完了した後は、やはり患者さん自身が生活習慣、食生活の見直しをしていただくことが重要だと考えております。

心筋梗塞の場合では、緊急対応が必要ですので、入院してすぐに治療に入ります。可能な限りカテーテル治療での完結を目指し7~14日の入院期間となりますが、複数の冠動脈が悪い場合、心臓の機能がもともと悪い方などは心臓血管外科のある施設に転院搬送となります。

当院の新しい検査・治療機器について教えてください。

 ・新型アンギオグラフィー

当院では昨年より血管造影検査の機器を新しく更新しました。大きな特徴としては、画質がよくなり、被爆量も大幅に減り、患者様にとっても今まで以上に安心して検査を受けていただけるかと思います。

 

 ・ロータブレーター

血管をバルーンやステントにより拡張する血管内手術をする場合に、血管が油やカルシウムなどでカチカチに硬くなってしまい(=石灰化)、拡張が困難な場合があります。ロータブレーターはダイヤモンドの粉をまぶしたドリルのような装置で、石灰化した部分を削ることができます。導入できる病院に基準があり、基本的には心臓カテーテル治療学会の専門医がいる病院で使用できます。2020年に施行施設基準が変更され、当院でも導入し、2021年:13例、2022年:19例、2023年:14例を施行し合併症なく治療できております。35㎜の冠動脈の中を1分間に1618万回転する機械ですので細心の注意を払い取り組んでおります。


ローターブレーター画像:提供はコチラより

 

・ショックウェーブ(血管内石灰化破砕術:IVL)



2023年末に新しく導入したショックウェーブは尿路結石を破砕する衝撃波結石破砕術(ESWL)と同様の原理で、冠動脈内で衝撃波を血管内に発生させ、正常血管や柔らかい動脈硬化組織を傷付けることなく石灰化した部分に亀裂を入れることで風船、ステントの拡張を可能な状態にします。非常に画期的な機械で2024年から半年で15例を治療し良好な結果を得られており、今後施行対象が増加すると思われます。


ショックウェーブ画像:提供はコチラより

 

患者さんの病態に合わせてロータブレーターで削るか、ショックウェーブで割るかを判断しています。また、ステントを留置するか風船だけで処置するかは機械によって変わってきます。患者さんよって冠動脈の形態および重症度は異なるため、よりよい治療方法の組み合わせを相談し治療しています。

手術のリスクを教えてください。



手術のリスクはゼロではありません。一般的に1万人のうち6人(0.06%)では、脳梗塞や目が見えなくなる、腎臓に問題が起こるといったケースがあるといわれております。この10年間でロータブレーターも進化し、デバイスの性能も良くなっています。カテーテルのサイズも細くなっており、進歩しています。引き続き、患者様に満足していただくように、安全第一に高度なカテーテル治療を提供できるよう循環器内科チームとして取り組んでまいります。

狭心症・心筋梗塞はどうしたら予防できますか?

基本的には生活習慣の見直しが必要です。薬の服用や栄養摂取にも気を配る必要があります。若い人は不摂生により高リスクとなっている人が多いです。高齢の方は年齢に加え、高血圧、糖尿病、脂質異常症、タバコなどの蓄積です。年齢にかかわらず生活習慣を管理することが重要です。

若い人に私がいつも治療の際に説明しているのは、治療の土台の8割は患者さんの生活習慣で、残りの2割は私が出すお薬ですと伝えています。

生活習慣の見直しで、運動は非常に重要です。筋トレなどの無酸素運動は心臓にすごく負担がかかってしまうので、ウォーキングなど有酸素運動をしてもらうようにお願いしています。よく言う30分の運動、適度な運動や生活習慣の改善が大切ですね。

最後に読者に向けて一言メッセージをお願いします。

困難な状況でも、力を合わせて乗り越えましょう!

インタビュー医師紹介

平成13年愛知医科大学医学部卒業。名古屋第二赤十字病院で研修後、平成15年三重大学第一内科に入局しJCHO四日市羽津医療センター、三重県立総合医療センターなどで勤務しました。三重大学第一内科、各施設のスタッフに指導を受け日常診療に励んできました。まだまだ未熟ですが患者様により良い医療をできるように努めてまいります。また、今までの経験、知恵を若手に伝授、還元できるよう教育にも力を入れております。

主な治療疾患

・狭心症・心筋梗塞などの虚血性心疾患

・不整脈

・心不全

・弁膜症

・閉塞性動脈硬化症・大動脈解離などの動脈疾患

・肺塞栓症・深部静脈血栓症

※文中に記載の組織名・所属・内容等は、2024年6月時点のものです。
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