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【臨床検査課より】
 

第55号
〜 輸血後感染症 〜  
 

現在、日本の輸血患者数は年間100万人以上

国民の100人に1人は輸血していることになります。
現在、3人に1人がガンで亡くなると言われていますが、輸血が最も必要とされるのもガン患者で、輸血用血液の45%が使用されています。また、その他の疾患や、妊娠分娩にも輸血は行われています。このように輸血は身近な医療であるにも関わらず、その安全性がどうなっているのかを、正しく理解されていないのが現状です。

現在の輸血の安全性 〜ほぼ100%安全という時代へ〜

現在、より安全性の高い血液が輸血医療に使用されるよう献血されたすべての血液に対して、血液型検査や感染症予防のため厳しい検査を行っています。1999年からNucleic Acid Test(NAT)という感度が高い検査が導入され、HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)、HIV(エイズウイルス)の3種類のウイルスをスクリーニングするようになりました。その結果、輸血に伴う感染症は大幅に減少し、ほぼ100%安全という時代に入っています。しかし、検査をしても「検査のすり抜け」があることが、その後の追跡調査で明らかになりました。なぜなら、ウイルス感染直後の血液は、検査で感染を判定できない時期(ウインドウピリオド)があり、その期間の血液が紛れ込んでいると検査をすり抜けてしまいます。世界に先駆けて1999年から導入した感度の高い検査でも、検査で感染を判定できない時期(ウインドウピリオド)を短縮できますが、ゼロにすることはできません。

検査で感染を判定できない時期(ウインドウピリオド)

HBV(B型肝炎ウイルス)  34日
HCV(C型肝炎ウイルス)   23日
HIV(エイズウイルス)      11日

 

輸血後感染症の感染リスク(推定)

HBV(B型肝炎) 1年間に42〜43人(約1/13万人に1人)
HCV(C型肝炎) 4年間に1人(約1/2200万人に1人)
HIV  (エイズ)    4年間に2人(約1/1100万人に1人)

健康被害救済制度

 人や動物など、生物に由来するものを原料や材料とした医薬品や医療機器などの生物由来製品については、ウイルスなどの感染の原因となるものが入り込む恐れがあることから、安全性を確保するための様々な措置が講じられてきております。しかし、最新の科学的な知見に基づいて安全対策が講じられたとしても、生物由来製品による感染被害の恐れを完全になくすことはできません。
このような背景から、生物由来品感染症などの被害救済制度、血液製剤に混入したHIVにより健康被害を受けた方の救済制度が創設されました。これは生物由来製品を適正に使用したにもかかわらず、その製品が原因で感染症にかかり、健康被害を受けた方の救済を図るため、医療費、医療手当て、障害年金などの給付を行う制度です。
当院では患者様が輸血3ヶ月後に感染症検査を受けられることをお勧めしております。万が一、輸血によって何らかの病原ウイルスに感染したことが証明された場合、健康被害救済制度に申請することができます。この制度で救済を受けるためには、輸血後約3ヶ月後に感染症検査を行っておくことが望まれます。

参考文献 日本赤十字社 血液事業本部医薬情報課 輸血情報
独立法人医薬品医療機器総合機構 健康被害救済制度

文責 松本 安代

 


 
鈴鹿回生病院 臨床検査課

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